「逃げ出したい」と思った経験が、今の自分をつくってくれた

昨夜放送されたNHKスペシャル「インサイド・トヨタ」を見て、久しぶりに当時のことを思い出しました。
私は外資系自動車部品メーカーでトヨタのエンジン開発のプロジェクトに携わり、レジデントエンジニアとしてトヨタの技術部に駐在していました。
私の役割は、技術的な窓口というだけではありませんでした。
欧州にある本社の開発チームと、トヨタのエンジニアや関係部署との間に立ち、開発スケジュールの調整や進捗のフォロー、課題への対応などを担当していました。
欧州本社と日本企業であるトヨタでは、企業文化も仕事の進め方も大きく異なり、その価値観の違いの狭間に立たされ、双方の考えをすり合わせながらプロジェクトを進めることは、想像以上に大変でした。
毎日のように欧州本社とのオンライン会議を重ね、開発状況を確認し、課題を共有しながらスケジュールを組み直す。その繰り返しの中で、胃が痛くなるような日々が続いていました。
「開発目標はクリアできるのか」
「品質は本当に大丈夫なのか」
「予定通り量産に間に合うのか」
「この判断で良かったのだろうか」
そんなことを考えながら、正直、逃げ出したいと思ったことは、一度や二度ではありません。
それでも、世界トップレベルの開発現場で仕事ができた経験は、その後の私にとって本当に大きな財産になりました。
技術だけではなく、仕事への向き合い方、品質へのこだわり、そして多くの関係者と信頼関係を築きながら、一つの目標に向かって進めていく姿勢を学ぶことができたからです。
今、キャリアコンサルタントとして企業で研修やキャリア面談を行っていると、当時の経験を思い出す場面が少なくありません。
仕事には、外からは見えない苦労があります。
あの経験があったからこそ、企業で働く方の悩みや葛藤に少しでも寄り添える自分がいるのだと思います。
人生には、その時は意味が分からない経験があります。
けれど時間が経って振り返ると、「あの経験が今につながっていた」と思える日がきっと来る。
昨夜のNHKスペシャルを見ながら、そんなことを改めて感じました。
株式会社キャリアクリエイティブ代表取締役/国家資格キャリアコンサルタント。 愛知県岡崎市出身。法政大学卒業後、株式会社デンソーに13年間勤務。外資系自動車部品メーカーやドイツでの海外勤務など、多様な環境でキャリアを重ねる。 2017年に株式会社キャリアクリエイティブを設立。「人はいつからでも変われる」を信念に、企業の人材育成・組織改革支援、キャリア研修、採用支援、教育機関でのキャリア教育などを展開。 9回の転職と3度の起業を経験。著書『読むだけで人生が変わる「すぐやる」思考術』(白夜書房)は紀伊國屋書店週間ランキング2週連続2位を獲得。 現在は、企業研修や「河原塾」を通じて、自立型人材の育成を支援している。

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